これまでの勉強で、我々観測者はずっと静止している状態として、変位や速度を扱っていました。しかし実際には、観測者が動いていることだってあり得ます。
また、物体が動くとき地面は止まっていると思ってました。ところが、動く地面の上を物体が運動する場合もあります。
今回は、このようなときに運動をどう表すかについて勉強しましょう。目標は、速度を合成・分解できることです。
速度の合成
直線上の合成速度
まずは、地面が動いている場合を考えましょう。右向き正の座標軸をとります。
右向きに歩く人がいるとき、歩道が右に動いていれば人の速度は増加します。逆に、歩道が左に動いていれば、人の速度は減少します。
このように、同じ直線上の速度は足し算で合成できるのです。この足し算された速度を、合成速度といいます。
速度\( v_1 \)で動く物体が速度\( v_2 \)で動く地面の上を運動するとき、物体の合成速度\( V \)は次のように、足し算で表されます。
注意!: \( V \) , \( v_1 \) , \( v_2 \) は速度ですから、負の数の可能性があります。
矢印と合成速度
直線上の合成速度は、足し算で計算できました。しかし、同じ直線上でなかったときは足し算では計算できません。このような場合の合成速度を、矢印で表すことを考えてみましょう。
下の図を見て下さい。合成速度の求め方は次の2通りあります。矢印の根元を始点と呼びます。
⑴始点をくっつけて平行四辺形
⑵矢印をくっつける
それぞれの方法は、図の通りとしかいいようがありません。
速度の分解
矢印を使って速度を合成できました。この逆をすれば、速度を分解できます。つまり、速度を平行四辺形の対角線とみなして分解するのです。
例えば下の図は、ある速度を2つの速度に分解しています。
相対速度
ここで、速度の問題で度々登場する相対速度について確認しましょう。
直線上の相対速度
相対速度とは、動く物体から互いを見たときの速度のことです。相手の速度から自分の速度を引くことで計算できます。これだけだとよくわからないので、もう少し具体的に見ていきましょう。
右向きを正とした座標軸をとります。速度 \( v_1 \) の物体Aと速度 \( v_2 \) の物体Bがあるとします。このとき、相対速度(Aから見たBの速度)は次の式で表されます。
相対速度は、相手の速度から自分(観測者)の速度を引いて計算できると覚えておきましょう。
矢印と相対速度(発展)
速度が同じ直線上にないとき、相対速度も矢印を使って考えることができます。
下の図を見て下さい。相対速度は、「始点をそろえたとき、自分の矢印の先から相手の矢印の先へ延びる矢印」で表されます。
まとめ
今回は少しポイントが多めでしたが、速度の合成・分解のところは特に重要です。ここだけは覚えましょう。ポイントのまとめをします。
② 速度の合成・分解は ⑴始点をそろえて平行四辺形 ⑵矢印をつなげる
③ 相対速度は、相手の速度から自分の速度を引く
これまで、速度について勉強してきました。
次回からは、速度が変化するときの扱いについて勉強していきましょう。